【特集】糖尿病に糖質制限は効くのか?

糖質制限に秘められた可能性

糖質制限は、炭水化物の摂取量を減らす食事を言います。近年ではカロリー制限だけでは思ったように改善せず、「カロリー制限よりも糖質制限の方が有効」との見方が常識になり、糖質制限食が急速に広まってきています。

一方で、糖質制限を行うことで短期的には血糖コントロールの改善に繋がるが、効果や安全性については賛否が分かれているのも事実です。日本でもカロリー制限食を最優先に指導する糖尿病専門医も数多く存在します。

このように、医師によって見解が分かれるのはどうしてなのでしょうか。糖質制限が糖尿病にどのような期待をもたらすのか?また、どのような弊害が起こり得るのか?見ていきましょう。

主流はカロリー制限食

2013年に日本糖尿病学会が発表した提言によると、「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量をはかることは、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など、重要な点について、これを担保するエビデンスが不足しており、現時点では勧められない」としています。

簡単に言うと、「糖質制限による糖尿病の食事療法は、エビデンス(医学的根拠)が少ないので勧められません」との見解です。あくまでカロリー制限食を第一に優先すべきだとの考えです。

近年、糖質制限の可能性が見出されつつある。

糖尿病の食事療法において、カロリー制限食はスタンダードであることは間違いありません。しかし、カロリー制限を辛く感じる人も多く、続けられずに適正な血糖コントロールができない人もいます。こうした背景から、近年では、糖質制限食の意義が見直されています。

そもそも、生理学的に見ても、血糖値を直接上昇させるのは糖質だけなので、糖質制限をすれば速やかに血糖コントロールできるようになるのは当然です。

糖質制限をすることで、薬の依存性も下がるというメリットもあります。2型糖尿病で糖質制限を行った過半数の人で薬剤が不要になり、インスリン注射をしていた人の約1~2割の人が注射不要になった、という報告もあります。

薬に頼らず、血糖値をコントロールできる点が、糖質制限の大きな長所だと言えます。

ただし、糖質のみの制限はまだまだ未踏の地

糖質制限は、カロリー制限食のようにカロリー計算をする手間がなく、続けやすい点も魅力です。しかし、糖質制限をすると、たんぱく質や脂質の量が増えて、栄養バランスが偏ってしまいます。腎臓や大腸に過度の負担がかかる可能性もあるのです。

糖質を減らせば減らすほど、血糖値を下げる効果は期待できます。しかし、糖質だけを制限し、ほかの栄養素を気にしない方法を行った場合、長期的にどのような影響をもたらすのかは、まだ明らかになっていないのです。

糖質制限も糖尿病に有効、ただし独学は厳禁

糖質制限により血糖地が改善することは、アメリカの論文でも発表され、日本でも期待が高まっています。しかし、このように成功する人は、糖の代わりに脂肪がエネルギーとなって燃え、さらにタンパク質から糖を作り、代謝がうまく回るというサイクルができている人です。

一方で、あまり太っていなく、体に余力がない人が糖質制限だけをすると、タンパク質だけでは糖やエネルギーを作ることができず、筋肉を分解して糖に替えて、エネルギーを作ることになります。そして、筋肉の低下が起こる、という弊害が起こってしまいます。

糖質制限を成功させるためには、自己流ではなく、必ず医師の管理のもと、効果や安全性を見ながら行うことが重要です。

糖質制限においても要注意!
飲み物に含まれる糖質

糖質制限は、淡水化物を制限するもの。飲み物は関係ないと思っている方もいますが、市販の飲み物には糖質が多く含まれている商品がたくさんあります。

果汁飲料、野菜ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンク、飲むヨーグルト、缶コーヒー、調整豆乳、ビールなど、これらはすべて糖質が含まれているのです。

食事の際には、水が最も良い飲み物だとされています。どうしても味のある飲み物が欲しくなったら、糖質ゼロや糖質の低い飲み物を選ぶようにしましょう。

TOP